(フィッシング)
 
 
 ディープな温度計 (2004.09.05)

 
 
これは湖底(特にチミケップ湖)の温度を 手軽に知ることを主目的に、携帯汎用としても使えるようにしたつもりの温度計である。
LCDは2行タイプを使用し、上の行には現在の温度を、下の行には約1分間隔での温度を更新表示する。
すなわち約1分前の温度計測値が保持されているから、湖底からタイミングよく引き上げることにより、湖底の温度を知ることができるはず。
なお、携帯汎用という意味では、気温や川の水温、スモーク時の温度などを手早く精度良く知ることができれば良いなぁーと思って製作した。

 
   
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 基本仕様

 1.温度センサーは「DS18S20」を使用。
 (-55゚C〜+125゚C)

 2.LCDは16文字x2行のバックライト無しを使用。
 (バックライト無しの理由は、ケースを薄く作りたか
 ったのと、省電力のため。)

 3.電池はコイン型二酸化マンガンリチウム電池
  CR2032を1個だけ使用。[ 3V→5Vに昇圧 ]

 4.ワンチップマイコンはPIC16F819を使用。

 5.電池電圧低下の場合は警告表示。

 6.自動電源OFF。(10分または4時間のソフト設定
  によるOFFタイマーを電源ON時に選択可能。)

 7.防水性は水深30mクリア。

 
 
裏側

 
   
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 色合いの悪い青っぽい写真に見えるが、これは
 裏蓋に透明青のアクリル板を使用したためで、
 実際にこんな感じ。

 裏蓋をシースルーにする必要性は無いが、
 ちょうど良いサイズの端切れ遊休在庫があったので、
 それを使用した。

 左の大きな円形のものはCR2032電池。
 配線材のほとんどは、細目のビニール電線使用。
 
 
LCDの裏側と製作基板の裏側

 
   
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    右は製作した基板。
PICとMAX619のDIPパッケージは、製作基板の裏面の、LCDのLSIと干渉しない位置へ配置し、できるだけ薄くなるようにしたつもり。
そのため、DIPのピンソケットは使用せず、ビニール電線を直付けとした。
製作した基板は、部品を配置するためのガイド板のような役割になっている。また、その基板とLCD基板の接続は、LCDの端子にDIPのピンソケットをハンダ付けし 、それにビニール電線の被覆を取ってハンダでコーティングしたものを直に差し込むことにより、ピンヘッダーの厚さスペースを節約した。

 
 
LCD表示部

 
   
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 上段の「Now」が現在温度。
 (計測及び表示間隔は約1秒。)
 そのすぐ右の( )内には約1分のカウントダウン表示
 をする。(電源ON時の設定表示にも使用する。)

 上段の最右には、電池電圧低下時に、空電池マーク
 を点滅表示する。

 下段の「Mem」には上段( )内カウントダウンが00に
 なったときに「Now」の数値をコピーする。

 下段右の「E」はセンサーのエラーカウンターで、
 通常は「0」。
 「9」を超えると、ソフト全体を自動リセットする。

 
 
センサー部

 
   
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 約20cmの電線で出してある。
 通常は引っ掛けて止めておけるように、アルミで筒状の金具を作り、 被せるように
 エポキシ接着材で固めた。
 (そのため、反応が少し遅くなったかもしれない。)
 センサー部を電線で出したのはスモークにも使いたかったからだが、
 他にも便利に使えそうだ。
 とりあえず冷凍庫の温度を手軽に測ることができた。

 
 
回路

 
    基本部分はデジタル温度センサーDS18S20テスト時と同じだが、携帯ということで、自動電源OFF回路と3V→5V昇圧回路などを追加している。

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[昇圧回路]

MAX619と周辺のコンデンサーが昇圧回路だが、「エレ工房さくらい」から通販購入したもの。
実は実際に動作させてみるまでは、安定動作するのか不安だったが、たった数個の部品でちゃーんと安定動作したので、久しぶりに「何かうれしぃー」という気分になった。

使用する電池については、単三Nicdx2本とか考えたりしたのだが、ケースが大きくなってしまうので、とりあえずCR2032で試してみたところ、 特に問題なく動作した。しかもそのCR2032電池は、部品箱の底から見つけたもので、新品 じゃないことは明らかなのだが、意外に長持ちしている。動作中の電池電圧を測定してみると2.5V前後を維持したまま安定している。今回、電池の寿命時間テストはしないが、新品で普通に?使用した場合は、1年くらいは持つという気がしている。

なお、電池が消耗して電圧が下がってきたら、その後どうなるのかのテストはしている。
元電圧が1.8Vより下がると、出力が5Vを保てなくなり少しずつ下がってくる。さらに元電圧を下げていくと、それに比例するような感じで出力電圧も下がっていく。
そーするとLCD表示が薄くなっていくので、 だんだんと使えない状態になってくることが分かった。急にダウンするわけではなかった。


[自動電源OFF]

回路は2SA1015トランジスタと2SK1482のFET部分。
ソフト上、自分で自分の電源を切れることと、ハード的にも電源ON、OFFさせることも合わせて考えなくてはいけない。
ハードスイッチは、ケースを防水にする構造上、押しボタンスイッチを付けたくなかったので、温度センサーのGNDを利用することを考えた。
TrとFETのB(ベース)とG(ゲート)部分(ただしダイオード接続後)をケースアルミフレームに接続しておき、温度センサーのGNDはピンで出しておく。それらを接触させることによりハードスイッチにすることを実現している。

1.電源がOFFだった場合、ハードスイッチはチョンと接触させるだけで、電源ONになる。
 a.TrのEからBへ流れるためE→Cも流れ、MAX619起動となる。
 b.MAX619の出力でFETがONになり、スイッチの接触が無くなっても、FETのI→Oが流れるので、
  Trの流れは保持される。PICの1番ピンは入力ピンの設定だから、PICへの電気流れ込みは無しと
  考える。

2.設定時間が経過した場合は、PICの1番ピンが電流を吸い込む設定になる。
   そうするとFETがOFFになり、続いてTrもOFFになるので、自動電源OFFとなる。

3.電源がONだった場合には(ただし初期設定経過後)、ハードスイッチを接触させると、PICは電源OFFの判定を
   する。

 
   
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 ハードスイッチが離れるのを待って、上記と同様にPICの1番ピンが電流を吸い
 込む設定になり、「Power OFF」表示後に電源が切れる。
 ハードスイッチが離れるのを待つのは、チャタリングなどにより、再びONするのを
 防止するため。

 
   
[電池電圧低下判定]

PICのA/D(アナログ→デジタル)機能を利用している。PICの17番ピンで元電圧をチェックしている。


[LCD濃度設定]

寒い日などはLCDが薄く表示されるのではないかと予想し、LCD表示を濃くする設定を付けてみた。
通常はLCD濃度設定端子からダイオードを通してGND接続しているが、 電源ON時の選択設定により、ダイオードを通さないでPICの2番ピンから吸い込むようにする。

■PICプログラム DS819_D1.src 24.7 KB …ダウンロード


[電源ON時の選択設定]

1.電源ON直後はLCDの上段右( )に03、02、01、00とカウントダウン表示する。

2.カウント00後は、L3、L2、L1、L0とカウントダウン表示する。
 a.カウントL0までにスイッチを接触させると、LCD表示が濃く設定される。
 b.スイッチが入ったときは「L」表示が「*」の表示に変わる。

3.カウントL0後は、S3、S2、S1、S0とカウントダウン表示する。
 a.カウントS0までにスイッチを接触させると、ハードスイッチが無効になる。
 b.スイッチが入ったときは「S」表示が「*」の表示に変わる。
 c.スイッチが入ったときは次のタイマー設定が無効になり、電源ON時の選択設定を終了する。
 ※ハードスイッチ無効設定については、海水他の通電性により、常時ハードスイッチON状態になってしまう
   場合を想定したもの。

4.カウントS0後は、T3、T2、T1、T0とカウントダウン表示する。
 a.カウントT0までにスイッチを接触させると、自動OFFタイマーが約4時間の設定になる。
 b.スイッチが入ったときは「S」表示が「*」の表示に変わる。
 c.スイッチを入れなければ、約10分の自動OFFタイマー。
 ※3-cについては、間違ってハードスイッチOFFと自動OFFタイマーを4時間に設定してしまった場合、
   4時間の間OFFできなくなるのを防止するため。

5.選択設定が終了となり、( )はカウントダウン表示になる。


[LCDのキャラクター登録]

次の3つを作成してある。
1.パソコンのキーボードにあるEnterマークのようなもの。
2.電池空マーク。
3.「゚ 」を右に寄せたもの。標準のパターンを使用すると、゚ とCが離れてしまい、ちょっと変だったので作成した。


[カウントダウン]

60ではなくて、51からのカウントダウン。
これは内蔵RCでウォッチドックタイマーを使用して約1秒としていたものを、腕時計内蔵のストップウォッチで1分を計測すると、約51カウントだったので。


 
 
工作編

 
   
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 今回の製作全般で一番苦労したところは、アルミの
 フレームかもしれない。
 簡単単純な設計のつもりだったのだが、失敗作が
 沢山できた。(T_T)

 ←これは上手く出来たもの。

 ケースの基本構造は、アルミフラットバーで枠を作り、
 透明アクリル板でサンドイッチするだけ。
 アルミフラットバーは、タップ加工をするため、3mmtに
 した。

 透明アクリル板のネジは、M1.4を使用した。
 しかし、アクリル板を締め付けるためか、手持ち品だと
 頭が小さく感じられ、抜けてしまいそうな気がしたの
 で、頭の大きなものを購入した。

 
   
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 [カド部]

 これはボツ。
 万力にはさんでたたいたのだが、3mmtのアルミ(A6063)といえども、
 かなり硬い感じ。
 内側はアールを付けたくないのだが、少し付いてしまう。
 
   
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 強度はあまり必要ないので、溝を切って曲げやすく
 した。
 3mm幅x1.5mm深さ+少しの面取りで上手くいった。
 (今度は簡単に曲がった。)
 
    [ケースの厚さ]

ケースの内々厚さ寸法は15mm。これくらいあれば部品が収まるだろうと、テキトーに決めた寸法だったのだが、上のフレームが出来て、仮組してみると…、 「ガーン」収まりそうもない。
対策として、基板を0.4mmtの薄いものを使用したり、電池ケースを自作したり、なんとか収めることが出来た。

 
   
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 ←は既製品の電池ケース。
 左のものは、「エレ工房さくらい」から購入したもので、右のものは
 秋月電子通商から購入したもの。
 左のものは電池の着脱がワンタッチでカチッと収まる感じで良いのだ
 が、基板取付後の高さが約11mmある。
 右のものは径が少し大きいけれど薄型。しかし、それでも基板取付後の
 最大高さは約8.5mm。

 
   
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 ←は自作電池ケース。
 基板取付後の高さを4.5mmにすることが出来た。

 電池ケース中央のデベソバネは、↑左既製品電池ケースのものを
 転用した。
 (↑左写真は、デベソバネが無い状態の写真。)
 
   
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 LCDの枠には、プリンターで印刷したシール(ホワイトフィルムラベル)
 を貼った。
 後で忘れてしまうと思われる、計測温度範囲や電源投入時の初期
 設定内容メモを書いてある。

 
    ■ディープな温度計 組立図   (A3カラー200dpi GIF形式144KB) …ダウンロード
■    〃      部品図1/2 (A3カラー200dpi GIF形式86.1KB) …ダウンロード
■    〃      部品図2/2 (A4カラー200dpi GIF形式42.9KB) …ダウンロード

 
 
まとめと反省

 
    湖底の温度を知ってどうする。と思われそうだが、実際に表層との温度差はどれくらいあるのか楽しみである。
しかし、水圧は大丈夫かな。水深10mで1kg/cm2だから、30mだと3kg/cm2(300kpa)の外圧がかかるはず。
あまり深く考えず、テキトーに作ったものだから、浸水しないように祈るだけ。

 
   
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 シール材は「セメダインスーパーX」クリア。
 浸水の恐れからか、ちょっと塗布し過ぎたかもしれない。
 アクリル板の方に4mm幅で0.5mm深さの溝を彫っておいたのだが、それを越えて
 はみ出している。

 裏蓋側にはシール材を塗布する前に、カー用ワックスを塗布しておいたのだが、
 いざ電池交換が必要になったときに、ちゃんと開くのか(剥がれるのか)不安。

 試運転は風呂で行った。当然だが、まったく浸水なし。(実は少し心配だった。)

 比重は1.5くらいなので、問題なく沈んで行く。
 完成重量は、ちょうど100g。
 
 
    携帯汎用という意味では、少し大きくて重いという 気がしている。しかし、常時携帯するものではなく、釣りバックに入れておく程度だからいいかぁという感じ。

[ソフトの問題]

新品電池なのに、電圧低下の警告マークがたまーに数回出ることがあり、気になる。古電池で電圧低下したものだと、連続点滅することは確認していたので、A/D(アナログ→デジタル変換)に何か問題がありそう。

センサーのエラー回数表示は、必要なかったのではという気がしている。それよりも、エラー自動リセットについて、 再考が必要だと思った。最終組立中に判ったことなのでそのままにしてしまったが、ON状態でセンサー線が断線した場合、永久にリセットプログラムを繰り返してしまう。

その他にもプログラムの不具合がありそう。
電源ON時の選択設定でチャタリング接触したときだと思うのだが、その後ハードスイッチを接触させると、大きな電流が流れるのか、接触させている間LCDが消えるが、OFFさせることは出来ない。
約10分のOFFタイマーは有効 のようで、しばらくすると自動OFFする。
致命的な問題ではないので、当面(もしかすると永久に?!)このまま使う。


[風呂テストでの水中通電]

電源OFFの状態で風呂に入れるとONする。しかし、電源ON後の選択設定では反応しないし、OFFにもならない。何回か風呂に 浸けたり出したりしながらやってみても再現性はある。海ではどうなるのか楽しみ。


[パラサイト・パワー接続の問題?]

沸騰した湯の温度を計ってみた。99.5〜100.5゚Cの範囲に入ることを期待したのだが、94.0゚Cに上昇したところで「---.-゚C」の表示になり、E値(エラー)がカウントアップしていった。いきなり沸騰したところに入れたのでセンサーが壊れてしまったのかと思ったが、それ以下の温度 になると正常表示されるので大丈夫なようだ。
もしかするとっていうか、今は、パラサイト・パワー接続のせいとしか考えられない。


2004.10.24(日)にチミケップ湖で使用したので使用レポートを追記する。

さーて、湖の真ん中辺まで漕いだところで、ルアーの釣り竿にディープな温度計を結んだ。
リールは、ブラックバスなど用のベイトリールに、10mごとに色が変わるPEライン25lbを巻いたものがあったので、それを使用した。
まずはディープな温度計をONにして、腕時計のストップウォッチをディープな温度計カウントダウンゼロで合わせてスタートさせておく。ここで表層の水温を測ってみる。水に浸けると少しずつ下がってきて12.0゚Cで安定した。
次にディープな温度計を沈める。しかし、あれっ、斜めに沈んでいく。っていうかボートが風で流されている。アンカーを下ろしてボートを停止させなくてはと思ったところで、アンカーをボートに積み忘れていたことに気付いた。
(アンカーといっても漬け物用重石。)
車には積んであったのだが、岸まで戻るのは面倒だったので(手漕ぎだから)、流されながらも底付するまで垂らすことにした。また、リールが空回りするという不調も発生し、 リールは息子の予備を借りて取替たが、通常のナイロンラインのため、水深 はまったく分からない状態になった。
底付してから、温度が安定したかなと思うまで少し待ち、腕時計のストップウォッチがゼロを過ぎたらすぐにリールを巻く。 巻いている最中にMemが書き換えられないように、1分以内に巻き上げればよいのだが、深いし斜めだしで、けっこう長さがあった。がんばって50秒くらいで、なんとか1分以内に巻き取ることができた。
すぐに下段のMemを確認したところ、「5.5゚C」になっていた。表層は12.0゚Cだったから、なんと6.5゚Cもの温度差があることがわかった。
心配だった浸水はしていなかったので、深さは不明だけど、とりあえず大成功。

[反省点]

実践で使用してみて、改良すべきと思った点は、「Mem」の書き替えカウント時間。現在約1分だが、リールの巻き取り時間が、思っていたよりも余裕がなかったので、2分くらいに延ばしておくのが良いと思った。

[その他での使用感]

現在は釣りバック常駐になっている。0.5゚C間隔だが、デジタル表示は思っていたより見やすく、水に浸けた状態で直読できるので、使いやすい。(Mem機能は必要ないが。)
ひょうたんから駒的機能の水に浸けたときだけ働くスイッチと自動OFF機能は良好。実際の使い方として、釣りバックから取り出して、ディープな温度計全体を川に浸けてしまう。あとはデジタル表示が安定するまで少し待つだけ。センサー部はアルミ筒状の金具被覆で反応が遅くなることも心配だったが、気になるほどではなかった。
使い終わったら、軽く振って水気を切ってバックにしまう。スイッチOFFの操作はせず、自動OFF機能に任せている。

 
 
汎用ケース購入 2005.03.06

 
   
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  カメラ屋でちょうどよいケースを見つけた。
エクスポーチという名前で実売価格は700円くらい。


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